洋上風力発電の将来性と日本の技術

洋上風力発電は、現在の世界の電力需要の18倍を供給できる可能性があると言われています。
国際エネルギー機関は、この発電システムが2030年頃までに1兆ドル規模の産業に発展する可能性があると発表しており、世界中で大きな成長が期待されます。
それまでの累計直接投資額は5兆円ほどで、経済波及効果は14兆円ほどだと試算されています。
2030年時点での雇用は10万人近くになると言います。
日本ではまだマイナーな存在ですが、北欧や英国などを中心として規模が拡大しています。

洋上風力発電プロジェクトのコストについて

現在、洋上風力発電プロジェクトのコストは、火力発電や原子力発電と比較して高いですが、それほどの開きはないと専門家は言います。
実際のところ北欧の底面固定式の洋上風力発電所は現在、補助金なしで建設されており、フェアな競争をしています。
具体例としてドガーバンク風力発電所を紹介します。
イングランド北東部の沖合で開発されており、完成すれば3.6GWを創出する世界最大の風力発電所となります。
これは英国全体の5パーセントの電力を賄うと考えられています。
およそ450万世帯のエネルギーです。
日本人の多くは補助金を受けて競争に参加すると考えるでしょうが、実際のところは補助金はありません。
風車1基のであり高さは260メートルで、ミッドタウン・タワーやりんくうゲートタワービルと同じくらいです。

浮遊式プラットフォームも構想されている

ドガ‐バンクなどは底面固定式ですが、浮遊式プラットフォームも構想されています。
風力発電事業者にとっても新たな大きなチャンスとなる可能性があります。
海の約80%は深海であるため、底面に固定された風力発電所の建設は困難です。
しかし浮体式の風車でならば設置できる範囲が非常に広がり、風力資源に関連したより理想的な位置に設置することができます。
つまり風の強い海上を探して建設することが可能になるのです。
ただし環境への影響、送電網への接続、漁業などへの影響など課題は数多くあります。
浮体式風力発電所を実現するためには、浮体式風車の設計と運用を現実的なものにすること、サプライチェーンを整備することの2つが不可欠です。
洋上に浮いていても転倒をせずに安定して電力を供給し、安全に陸上に運ぶ技術をつくるということです。
近年開発が進んできた技術としては、遠隔保守・監視システムと最適化されたボーリングシステム、新しい発電機のコンセプト、洋上風力タービンを設計法とツールなどがあります。
なかでも設計方法の最適化は使用する金属材料の削減になるため、建設コストと電力コストの削減に貢献するでしょう。

風力発電所をより総合的なアプローチで運用する方法の研究も進んでいる

風力発電所をより総合的なアプローチで運用する方法の研究も進んでいます。
これまでの風力発電所では、各風力発電機の出力が最大になるように運転されており、各風力発電機が周囲の風力発電機の運転に与える影響はあまり考慮されていませんでした。
現在、研究者たちは、風力発電所全体の出力を最大化する方法を研究しています。
つまり、一部のタービンの運転を抑制して、他のタービンの運転を改善するという方法です。
個々のタービンをどのように制御するかによって、ウィンドファーム内の風速がどのように変化するかを、リアルタイムで予測できる方法の開発が進んでいるのです。

洋上風力発電システムの課題

洋上風力発電システムは、送電網について課題があります。
欧州では2050年までに450GWの洋上風力発電を計画しており、アジアや北米でも多くの風力発電所が稼働すると考えられています。
数多くの洋上風力発電が行われる場合、電力を陸地に送るための送電網をどのように整備するか、そして技術が課題となります。
送電網というと海から陸へ電線が延びるイメージを持つでしょう。
ところが海上で製造した水素を陸地に輸送するという構想もあります。
このような風力発電所は、最高の風力資源があっても送電網が整備されていない陸地から離れた場所に建設できます。
周りを見渡しても陸地が全く見えないほどの遠海で発電ができるということになります。

グリーン水素とグレー水素

この技術はグリーン水素と呼ばれており、風力発電で水を電気分解して水素を生み出すことになります。
一方、天然ガスを利用する従来型の水素をグレー水素と呼びます。
エネルギーを大量に消費する自動車は、電力と水素燃料の2つが主流になると考えられています。
その両方が風力発電でまかなえるかもしれないのですから、これから風力発電への注目が増すのは必至です。
自動車に詳しくない人は電気自動車だけが主流となると思っているかもしれません。
しかしトラックやバスなど、重い車両をモーターで動かすのは限界があります。
そこで注目されているのが水素燃料です。
ガソリンのように爆発力があるため、重い車両を動かすのに適しています。

まとめ

燃焼しても水や水蒸気を排出するだけですから、地球温暖化を招く心配もありません。
現在水素燃料の自動車を製造しているのは日本だけですから、これから日本の技術が世界のスタンダードになる可能性があります。

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